第4話 出 発
さて、出発である。雪も降らず晴天。あっぱれ。
午後2時台のフライトであるため、朝は普通であった。
しかし、タカサカはいろいろと不安があったため、空港へ向かう時間を早く設定した。
これが、ノチノチにタカサカの立場に波紋を広げることになる。フー。
団長の車に乗って3人で空港へ向かうことになっていた。
タカサカの計画で、団長が家を出る時間は午前10時ごろであった。
団長から連絡があった。W.A.Rがこれから床屋へゆくという。??ヤヤヤ???
これから!!
時間は10時少し前である。これからか!!
タカサカが恐れていた不測の事態である。たぶん1月4日の床屋は混んでいるのではないか?
(注 過去何度もW.A.Rは不可解な理由で旅行の出発時間を遅らせている前科がある。そのおかげで、こちらが慌てふためく事態が勃発している。遅刻で一部に有名なぼく以上に時間にルーズなお方である)
W.A.Rに電話をした。
出てくれた。良かった。床屋へ向かったが混んでいたらしい。よかった。
これから家へ戻るという。で、団長の出発時間をズラした。
午前11時ごろ、団長出発。W.A.Rを拾って、タカサカを拾う。
12時ごろに2人が現れた。タカサカの計画よりもコトは順調に進んでいた。順調過ぎたために!
何ごともなく帯広空港へ到着。
空港の駐車場はイッパイであった。たぶん、年末の帰省客のものが大半なのであろう。
ココの駐車代がタダで良かった。羽田では1時間でいくらなのか? オソロシイ。
12時30分ごろの到着であったと記憶する。
空港内は静かだった。ちょうど出発到着のハザマだったようだ。搭乗手続きもまだだった。
すでに、3人のなかには早く来すぎたな、という思いがウズマイテイル。
タカサカは知らんプリをした。
昼御飯を食べよう。
気を取り直して2階へ。ラーメンを食べよう!
混んでいた。並んでいた。3人は並ぶのがキライだ。
食堂は空いていた。しかしキメテがなかった。
オミヤゲを買おう!
W.A.Rは東京で妹に会う予定になっていた。
混んでいた。タカサカも団長もオミヤゲを持っていく相手がいなかった。買い物に盛り上がることもなかった。
結局、W.A.Rも買わなかった。
オミヤゲ屋さんの奥にスタンド喫茶があった。悩んだ末に入ることにした。
タカサカはホットドッグを頼んだ。チーン!となってアツアツのが出てきた。
ニチロ水産のホットドック!
あいにく、窓に面した席はイッパイだった。三人は壁に面した席に並んで座った。
アツッ!
W.A.Rが小さく叫んだ。ハンバーガーから灼熱のトマトソースがしたたったのだ。
(注 「灼熱のトマトソース」という見事な比喩を用いたのは当のW.A.Rである)
右手に軽度のヤケドを負った。
ハヤスギタ ハヤスギタ クウコウツクノガ ハヤスギタ
タカサカには幻聴が聞こえていた。なにか気まずい。タカサカの設定時間が余裕あり過ぎだったのだ。
時間は午後1時ぐらいだ。まだ1時間程待たなければならない。フー。
ドースルッ!!
ロビーは混みに混んでいた。座るところもないぐらいに。
喫煙所も落ち着かない。
3階へ行きましょう、と3人は送迎デッキへ向かった。
混んではいたが、座れた。
窓際にはたくさんの人が飛行機を眺めていた。
時間はまだあった。
東京のガイドブックにも飽きがきていた。そんなときにW.A.Rが欲しいCDリストを取り出した。
細かなリストにはタカサカの窺い知ることのないメクルメク奥深い世界が垣間見ることができた。
ジャーマンロックでプログレなゴシックスィート? まあ、そんな感じの音の世界である。
(注 一部でCDコレクターと呼ばれている?ぼく以上にCDを購入するW.A.R。その貯蔵量は窺い知れないほどだという)
ちなみに、東京で2番目に美味しいのが、東京ホルモンである。
そんなこんなでかなりの時間を潰すことに成功。
搭乗手続きをし、荷物を預けた。
さて、搭乗ゲートをくぐる。かなりの人が並んでいた。迷惑を掛けるわけにはいかない。
しかし! ことごとくタカサカは引っ掛かってしまうのだ。
ピンコン! ポケットから小銭やケータイやリップやお守りをだす。
ピンコン! 巨大なムシメガネ状のもので身体検査。
ピンコン! どーも、クツがなりますねえ?
タカサカはクツをぬがされ、スリッパをはいてゲートをパタパタとくぐった。
鳴らなかった。良かった。
タカサカのクツは青いトレーに乗せられて、X線のキカイの中からトボトボと出てきた。
団長もW.A.Rも姿が見えなかった。
喫煙所のカーテンの向こうに見えた。タバコを吸っていた。
自分自身の不測の事態に対処できない哀しさがあった。
JAS154便はそんなタカサカの気も知らず、14時20分の予定を少し過ぎて飛び立った。
ちなみに、タカサカの席は7のEであった。