2005.12月『鈴木博幸展 NORTHEAST PLAYGROUND : TIDEWATER』

2005年12月26日(月)〜2006年1月9日(月)

インスタレーション・布・LED

「NORTHEAST PLAYGROUND : TIDEWATER」は潮の影響を受ける河口の
水をモチーフにしたインスタレーションであり、北方圈文化の生活、
環境を主題とした連作インスタレーション『NORTHEASTPLAYGROUND」
シリーズの一部となるものです。

洗濯ロープに掛けられたシーツを透かして、青色LEDのイルミネー
ションが点滅するだけという構成に、鑑賞者は拍子抜けするかもし
れません。洗濯ロープに掛けられたシーツは北方圏に生活すること
をスクリーンとして、青色LEDのイルミネーションか点滅する様子
は北方圈の自然環境が生活に与える影響として意図しています。

北方圈の自然環境に南方圏の生活環境が馴染まないように、自然環
境と生活環境は切り離すことの出来ない強い話びつきを持っていま
す。その両者を空間インスタレーションとして構成するのに、わた
しは潮の影響を受ける河□の水をモチーフにしました。

十勝平野には幾筋もの河が流れており、かつてアイヌの人々はこの
土地を指して「女性の恥部」と呼んでいました。それがわたしが生
活している「帯広」の語源なのですが、そのことからわたしはこの
土地を「子宮的な場所」として見ていました。それから女性の生理
現象も潮の満ち引きと関係があると言われています。潮の影響を受
ける河□の水とはこの土地を支える自然環境の女性的な側面を意図
したものでもあるのです。また、洗濯ロープとシーツは生活環境に
ついての表象ですが、洗濯という水に関わる事物であることを考え
ると興味深い組み合わせであると思います。

「NORTHEAST PLAYGROUND TIDEWATER」と同じように、
わたしは地下水や俗に「十時晴れ」とも呼はれる青く高い空、
どこまでも平坦な大陸的なイメージを持つ土地など、十勝の
自然環境(風土)をモチーフにした別のインスタレーションに
ついても考えているのですが、それもまたこの女性的な側面=
「子宮的な場所」として構成する用意をしています。

わたしとしては、将来的にそれらを組み合わせて「NORTHEAST
PLAYGROUND」というひとつのコスモロジー的世界像を構成出きれば
と希望しているのです。

わたしがイメージする現代アートとは「鑑賞者が作品コンセプトに
ついて考える表象行為」です。現代アートには冗談ともとられかね
ない観念的な表現がたくさんあります。わたしもまた多くの現代ア
ート作品を見るにつけ、これはたんなるギャグだろう、と思うよう
なものもありまし応し、ただの語呂合わせや観念的な遊戯にしか見
えないものもありました。

今回、わたしは空間インスタレーションを構成するのに、意図的に
そのようなイメージとしての現代アート的フォーマットを用いまし
た。そしてそれび、鑑賞者としてのわたしの現代アートに対する批
評でもあるのです。

わたしは自分がアーティストであるといった自意識を持っていませ
ん。なぜなら、そうした自意識を無効化する場所で、いわば現代
アートを批評的に構成することを実賎し、わたし自身を不断に更新
することが作品を構成する大きな動機となっているからです。

それらのことをひとつの空間として誰もがイメージし、理解できる
ように構成したつもりですが、制作者として力不足であることは否
めません。それがこのような文章を書いている理由でもあります。
最後に、TIDEWATERをイメージしたBGMも制作しました。

本展は
『田園都市のコンテポラリーアート雪と風の器05-06』
〜FIELD OF ART : TOKACHI – 在るべき場所へ 〜

の一環として開催されました。

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