白い紙で「雪の結晶」を切るという表現を目の当たりにしたのは「田園都市のコンテンポラリーアート〜雪と風の器 2004-2005」の時でした。企画の中の「帯広シティアート」参加作家、眞鍋幸恵さんの作品「雪のひとひら」で用いられました。
展示内様はワークショップ形式で複数の参加者で結晶を作成し、結晶同士を糸で結び室内天井から吊るしていくというものでした。参加したタカサカは結晶作りの面白さを知り、いつか「結晶」を使って、屋外でナ二カしてみたいなと思ったものでした。
路上でのイベントが動き始めます。眞鍋さんの理解も得られ計画が進んでゆきます。
真夏の路上にたくさんの「雪の結晶」を貼り巡らすと美しい光景になるだろうと思い描きました。「夏に雪を降らせる」というフレーズそのままに「なつのゆき」という題名にしました。
屋外路上に直接張るためにはラミネート加工が必要でした。高価な工程でしたので困っていたのですが、協力者タカハシさんのおかげで安くラミネートシートを分けていただくことがで きました。感謝感謝です。ラミネート加工機は高田佳子さんよりお借りすることが叶いました。感謝感謝。
通りがかりのお客さまにも結晶を切っていただくことが重要なのですが、始まりの全体の見た目の美しさのために事前に完成した結晶を路上にはり巡らしたいとも考えました。なのでタカサカはFLOWMOTIONにいらっしゃるお客さまの協力のもと結晶作りをスタート。
目標は大中小あわせて1000枚。枚数を考えますと気の遠くなる仕事なのですが、一枚一枚予想とは裏腹に出来上がる結晶に一喜一憂するうちに楽しい気持ちのまま結晶は出来上がってゆきます。
雪の結晶の基本は六角型なのですが、後は自由です。ハサミを入れる線が直線であるほうがより結晶のように見えるのですが、曲線でも良いのです。ちなみに曲線を多様しますと民族紋様のようになります。不思議です。
ほぼ結晶の枚数も目標に近付いた頃に、コンセプトの見直しがありました。これがなかなか難しい。タカサカの空想した世界観を多くの皆様に共有して頂くための文章ともなりますと難しい。調べものをしていく中で一つのフレーズにぶつかりました。
「雪は天から送られた手紙である」
雪の結晶の研究で知られる故中谷宇吉郎博士の言葉です。とても詩的で心にすっと溶け込む一文でした。連想は一気に流れてゆきます。真冬の空から届く手紙である「雪」に対して、真夏の路上から天空へむけて返事として「雪の結晶」を切る。
物語が出来てから更に結晶を切ることが楽しくなりました。夜遅くまで何枚も何枚も切っていますと、空想はあふれてゆきます。今自分で切っているはずの結晶は、もしかしたら天空から届いたばかりの手紙なのではないのか?という思い。ハサミで切り込みを入れた小さくたたんだ紙片を広げるときに思わぬカタチの表情に何度もそんな気持になったのでした。
作りこんだ結晶はイベント時間内に路上に貼っていくことで生きてゆきました。ナニカをやっているという注目を浴びることが出来たのです。目の前では短時間で結晶を切ることが出来ます。できあがった結晶は路上に張られてゆく。一連の流れが自然に目視できることができたのです。
個人で作った結晶は単体でも十分美しく成立するものなのですが、無記名で一緒に路上に貼ったことで大きな意味が出てきたようにも思えました。自然に降る結晶も千差万別であれば、人間が作る一枚一枚も本当に千差万別でした。
二回目の時は、更に展示用に工夫をしました。大きな黒画用紙で丸を作り、そこに結晶を張り込みました。様々な結晶は重なりあい、多種多様な世界をイメージさせる美しさになったように思えました。
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