2009年6月11日(木)~6月23日(火)
中村清人:
帯広市在住 サラリーマン
完全にデジタルの時代になった昨今であっても,私はフィルムと印画紙という
アナログ技術にこだわりたいと思う。
人間が自分の見たものを記録に残そうとする行為は,古代人がはじめて洞窟の
壁に動物の絵を描いた時以来,人類共通の願望である。こうした願望からやがて
人類は「カメラ・オブスクラ」を発見(発明)した。
「カメラ・オブスクラ」とは「暗い部屋」を意味するラテン語である。
1836年に最初の実用的な写真技術としてダゲレオタイプが発明されたが,そ
れは「カメラ・オブスクラ」の感光部に印画紙を置いたものに過ぎない。その
後,カメラは急速に進化するが,どのようなカメラ(デジタルも含め)であろう
と「暗い部屋」を内包しているのだ。
天才画家レオナルド・ダビンチが「カメラ・オブスクラ」から遠近法を見つけ
出し,光りの画家ヨハネス・フェルメールは「カメラ・オブスクラ」をデッサン
の道具に用いて一連の傑作を生みだした(彼の作品では絵画であるのにアウト
フォーカスになった部分が克明に描写されている)。
フィルムと印画紙を使った再現行為は,まさしく「暗い部屋」の中で行われる。
その行為は,暗がりで光りを使用して自分の見たものを再現しようとする行為
であり,見たものを絵画で再現しようとした先人達と同様な願望を「暗い部屋」
と言う原始的で神秘的で呪術的な空間で再現しようとするものである。
だからこそ私は,そのプロセスをこれからも大切にしたいと思う。
本展は『田園都市のコンテンポラリーアート展 雪と風の器2009』の一環として展開されました。
*
*