フロッタージュのこと 〜 帯広競馬場にて

2005年6月4日

野外での「デメーテル学校」に久々の参加をしてきました。
札幌から美術家、岡部昌生さんをお迎えしてフロッタージュのイベントがあったのです。
フロッタージュと言う技法は、凸凹したところに紙を置いて、鉛筆などでワシワシと紙の下に隠れた物体をあぶり出す表現です。単純な話なのですが、やってみるとなんだか不思議な気持ちになるのです。
岡部さんは、かねてよりフロッタージュを用いて、日々の中で見過ごされてきた事物を、文字通りこすり出して、あぶり出してきました。
今回の帯広競馬場でのテーマは「馬」。十勝・帯広の開拓と発展の歴史をあぶり出すのがテーマです。
帯広競馬場には「ばんえい競馬」開催の時期にしか馬はいません。もちろん、開催中の時には厩舎などには近付くことは許されません。
馬を中心にした集団が年にぐるりと北海道の「ばんえい競馬」開催地をまわるのです。定住社会の日本で、遊牧の民がいるのかと思うと色々なことが想像されますね。

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美術家・岡部昌生さん

タカサカにとって競馬場といえば「とかち国際現代アート展デメーテル」です。
タカサカは久々に競馬場の中に潜入いたしました。「デメーテル」の撤去作業以来でしたからほぼ2年ぶりのことでした。
「デメーテル」当時の物体は何一つ残されていません。記念に残る痕跡がないというのも珍しいのではないでしょうか? そんなことを考えながら歩いていましたら、記憶に残る「デメーテル」が愛おしく思えてきました。
オノ・ヨーコさんのお空のテレビも、川俣正さんの木馬もありません。緑のよつばのトンネルもありませんし、インゴ・ギュンターさんの金の骨もありません。
厩舎は廃屋のように見える建物ですが、現役で使用されていますので、馬の匂いが染み込み、そして染み出てきています。
そんな中で、それらの表面を鉛筆の芯の塊のようなもので紙にこすりとりました。
ただただこすり取るだけですから、誰にでも出来ることなのですが、出来上がりは千差万別。それぞれの視点が様々なストロークでこすりますので、例えば一つの物体を複数人でこすり出しますと、それぞれが別作品になってしまうというなんとも奇妙な体験です。
競馬場で思いを巡らし仕上げた作品は広島へと旅をして、手もとに戻ってくるそうです。

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フロッタージュ中のタカサカとスズキ