2008年5月2日(金)〜5月6日(火)
会場:とかちプラザ アトリウム
四季を移ろいゆく雪と風の器には、たおやかな食材が良く似合う。
たとえその器の底に、自身の臓器がへばりついていたとしても…。
第1楽章・春
『プラーナ-風を見るための装置』(円弧状に揺らぐ屋外用座イス)
「プラーナ」とは古代インド哲学で言うところの風、「気」、魂の呼吸。この椅子に座ったなら、まずは目を閉じて大きく深呼吸…。聞こえるでしょうか、地球の裏側で今、何が起こっているのかが…。プラーナのアンテナは風そのもの。イージスなんて蚊帳の外。そう、何も動かなければ風は起きないからね。まずは見ること、知ること、考えること。その前に、手足を動かして何かを作ろう、外へ出よう。「手考足思」、春なんだから。
第2楽章・夏
『風に立つ』(海辺で拾った流木による馬のオブジェ)
もし十勝に豊穣の神がいるとしたら、それはきっと馬の形をしているに違いない。漂流の果てに流れ着いたこの十勝で、今、種を播く。向かい風、前足を踏ん張って対峙する。でもそれが汗ばんだ肌に心地よい。その風圧はいつか通り抜けるためにある。ベルヌーイの定理のままに加速度を増す流速に、クチから飛び出す内臓を抑えながら…。見晴るかす大草原の果て、未だ見えない出口を求めて。
第3楽章・秋から冬へ
『爾今のUNMA』(原寸大の馬の形をした遊具風イス)
かつての十勝平野は直径1メートル級の柏の大木に覆われていたという。先人達がそれを切り倒して拓いた大地から、恩恵を受ける収穫の秋。植物の命をいただき、排泄を繰り返す秋。
そして冬。馬小屋だった工房で製作していたためか、それはいつも馬の形をして降りてくる。「シャンシャン…」という鈴の音が聞こえてきたかと思うと、いつのまにかその馬が馬ソリを曳いて現れる。馬もまたベジタリアンとしての己の罪深さに気づき、凍てつく太平洋に入水を図った。倭人より先住していた方々は言っていた。「自然からはお釣りを貰うだけ」。そうだ、万物の精霊を供養しよう。…外は雪、レクイエムの終章。
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武井和典 プロフィール
1955年 横浜市鶴見区生まれ
両親とも長野県諏訪周辺出身。曾祖父に刀鍛冶や宮大工など
1960年 横浜市戸塚区に移住
1972年 横浜市立戸塚高校中途退学
日本デザインスクール・商業デザイン科に入学
1974年 同校卒業。サトーデザインセンター入社、毎日新聞社出版宣伝部に出向
1981年 毎日新聞社より『ザ・バイク』創刊。以後10余年、バイク雑誌の編集者
1991年 音更に移住。帯広高等技術学院・木工科に入学
1992年 同校卒業。帯広の黒坂産業入社、特注家具部門のデザイン、製作担当
1994年 音更の英双工房で特殊造形の製作アルバイト
1996年 木工家具、クラフトの『空色工房』を自宅脇に構える
十勝のアート&クラフト集団『トレス・アニョス』展に参加。以後毎回出品
2002年 中札内美術村の『座ってみたい北の創作イス展』で、 巻き貝のような形をした作品『ガイアの呼吸』で最優秀賞を受賞
2003年 十勝の木工家集団『t.h.f.』に参加。以後展示会には毎回出品
2007年 十勝千年の森、丸太のベンチ製作など、 創作デザインの注文家具、クラフト、看板などのジャンルで活動中
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本展は、
『田園都市のコンテンポラリーアート雪と風の器2008 市民芸術祭』
の一環として展開されました。