第8話 密室熱気地獄変 2002年1月4日金曜日
さて、長かった1月4日の金曜日も終わろうとしている。
ゴメン、ホントに長かった?
別に選んだ訳ではなかったが、ちょうどホテルへの帰り道が都庁通りになった。
こんな偶然があってこそフラリ旅である。
夜の都庁もまたオツなもの。
あんなにも捨てる程にいたヒトゴミもこの辺りにはまったくなかった。正月の官庁街であるから当たり前ではあるが、これもまた新鮮なもの。
とにかくタカサカは跳ねてみたわけだ。
ズズーっと続く都庁通りの突き当たりがワシントンホテルである。
帰ってきた!と思えるから不思議だ。
(注 都庁を初めて見た。都庁の周囲はまさに未来都市!という感じに複雑な構造をしていた。アンドレイ・タルコフスキーが『惑星ソラリス』で未来都市の風景を当時の東京をそのまま撮影したことが思い出される)
部屋に戻る前にホテル内のミニストップで飲み物を買い求めることにした。
タカサカはビールを買った。寝酒が欲しかったのだ。
レジで宿泊客であるカードキーの提示を求められた。そおいうキマリらしい。
さて、戻ってきた。
なんとなく、恐怖は始まっていたのだろう。たぶん。
まずは、テレビをつけた。
買ってきた飲み物を冷蔵庫に入れようとココロミタがここのは販売用のがガッチリと組み込まれているため、余計なものを入れることが出来ないタイプであった。残念。
しかし、冷やさねば! コオリ ハ ドコダ!
(注 つげ義春の『ねじ式』の「医者はどこだ?」のパロディと思われる)
部屋からは製氷機は遠かった。しかし、労を惜しまず、W.A.Rと団長がむかった。
買い物袋イッパイの氷りを2人は持ち帰った。
ミネラルウォーターのボトルを埋めた。
タカサカが最初にシャワーを浴びた。早くビールを飲みたかったのだ。
そして、それぞれがシャワーを浴びた。
みんなが『寝』の体勢に入っていた。本格的な恐怖はこれからである。
部屋が暑いのだ。
とにかく暑い。
もう、シャワーを浴びてカラダがホテったという暑さではなかった。
何かテはないのか?
なかった。
一応、部屋のエアコンの説明書を読んだりもしたが、天井のダクトに手をかざしてみると、ナルホド心無しか涼しい様な気がする、ガしかし部屋は暑いのだ。
マイナス20度のクニからやってきた3人が東京の冬にヤラレようとは。しかもエアコンに振り回されようとは、誰が予想しただろう?
(注 真冬に熱帯夜を過すことになるとは誰が想像したろうか? 部屋が比較的高い階にあるとはいえ、あの部屋の暑さは尋常ではなかった。眠りにつくまでのあいだ、ぼくはこのまま脱水症状で緊急病棟24時にお世話になるのかと恐怖した)
とにかく、気付かないフリをして寝ることにした。
しかし、カラダは正直だ。寝返りをうつ回数がただただ増える。
眠りに落ちたかと思えば、うなされるように何度も起きた。
少しでも水蒸気を!と思い、濡れたタオルをブラ下げてはみたが、体感的にはなにも効果はなかった。
歩きに歩いたために疲れているのは確かだ。ドロのように眠りたい。しかし、乾いたカラダは水を欲して、意識を眠りから引きずり戻す。
その度に、タカサカはジャスミンティーを口に含んだ。
何度となく、それは繰り返された。
そして朝を迎えた。
1月5日の土曜日だ。
パリっと乾燥したタオルがブラ下がっていた。