手話について 015
FLOWMOTIONには、耳の聞こえないお客様がいらっしゃいます。
その方とお話をする時には、なるべく筆談ではなく手話を使うようにしています。
だからといって私が手話でペラペラと会話できるわけではないので、時々全く違う意味になって、訳が分からなくなります。
それなのに、私の言いたいことを分かってくれて「ああ。こういうことを言いたいんだね」と正しい手話を教えてくれるときには、本当に「スゴイ」という尊敬の気持ちと、覚えが悪くて「ゴメンナサイ」という申し訳ない気持ちになります。
しかし、彼らとおしゃべりをしていると、とっても楽しくて、あっという間に時が過ぎていってしまいます。口でしゃべるよりも、つたない手話で伝えるほうが時間がかかるので、あっという間に感じてしまうのかもしれません。
手話は耳の聞こえない人たちが、自分の思いを伝えるために、長い年月をかけて構築された言語です。手や指で動きをつけることによって、その動きに意味を持たせて、一つ一つ単語を作っていくのですから、それはそれは大変なことだったと思います。
耳の聞こえない人々同士が、それを互いに理解して使っていかないと言葉はすたれていきます。人々に浸透し、使われるようになるまで、どのくらいの時間がかかったのかを思うと気が遠くなります。
彼らは手の動きだけでなく、顔の表情も使って話をします。
「まあまあ、楽しかったよ」と
「すっごい、楽しかったよー」を顔で使い分けます。 これには驚きです。
手ではなく顔をじっと見てしまいます。本当に、役者さんのように顔の表情がコロコロと変わっていきます。きっと、顔の筋肉が鍛えられて、年を取っても張りのある肌でいられるんだろうなあ・・・と思っているうちに、手話は次々と進んでいき、もう分からなくなってしまいます。「何?何?」と、また同じ話を繰り返させてしまいました・・・反省。
手話は見て分かるものが多く、ほとんどがジェスチャーです。
「おいしい」はほっぺに手を当てます。おいしいものを食べたときに「ほっぺが落ちるほどおいしい」って言いますよね?落ちないようにほっぺをポンポンと軽く叩きます。
「ありがとう」は左手の甲の上に、右手を立てて乗せ、そのまま顔まで持ってきて同時にお辞儀をします。お相撲さんが勝って、行司からお金をもらうとき、右手で何かを切るように上下に3回くらい動かします。あの動きを「ありがとう」の表現にした・・・と聞いたことがあります。
他にも、「泣く」は親指と人差し指で涙の形を作って、目から頬を伝わらせます。
あ、いかにも「かなしい」という顔でやってください。かなり大げさに。
表情は動かしているようでいて、あまり動いていません。自分では大げさにやっているつもりでも見ている人にとっては、たいして動いているように見えないのです。
次は、両手をグーにして、小指側をお腹にポンポン叩きつけて「大笑い」の表情をしてください。これは「おもしろい」です。
自分の気持ちを表す言葉を覚えると、だんだん楽しくなってきます。話せなくても、何かを指差して「おもしろい」「かなしい」をするだけで、その時見たものに対する自分の気持ちを伝えることが出来るのです。
上達すると話しをする以上に速く、伝えることが出来る・・・はずです。
ひと昔前になりますが、手話ブームのようなものがありました。耳の聞こえない人が主人公のドラマで、手話のシーンがたくさんありました。ブームは去ってしまいました。
手話はブームになってはいけないものだと思います。簡単な表現方法を小さなうちから覚えておくべきだと思います。
人間、いつ、どんなことが起こるかわかりません。年を取って、耳が聞こえなくなる人も多いのです。手話を少しでも覚えていたら、耳の聞こえない人とも話が出来て、おじいさんおばあさんに対して、声を張り上げなくても良いのですから。
では、左右の人差し指を出して、ETのように指先を合わせるようにします。糸を巻くようにクルクルと回してください。顔はそのままで良いです。
これは「手話」の手話です。
2010年3月
FLOWMOTIONカフェ担当 つかこしちひろ