「はやぶさ」と「イトカワ」と地球 020
2011年3月11日、午後2時46分。 大きな地震がありました。
3分ほども続く横揺れに、これはただごとではないと悟りました。
テレビもラジオもない店内で、インターネットに頼って情報を探しました。
すると、広島県の中学生の男の子が、自宅のテレビにビデオカメラを向けてパソコンに繋ぎ、ユーストリームというサイトを通じて地震速報を全国発信、いや全世界発信をしていたのです。
その映像は目を疑うものばかり。 泥と壊れた家と、車と船と、様々なものを飲み込んだ波が、さらに内陸の畑とビニールハウスを信じられないスピードで覆いつくしました。
・・・どのくらいの方々の命がその中に含まれていたのかは言うまでもありません。
以前、この月イチコラムで日高山脈と十勝平野のことについて書きました。
北海道は東の地が西の地にぶつかって繋がり、押し合って押し合って日高山脈ができたこと。 それは全てプレートの動きによるものです。
太平洋プレート(東側)が北米プレート(西側)に向かってすこしずつ進んでいるのです。
このしくみは私も知っていました。 だから、釧路沖や十勝沖で地震が起こることも。
でも、どうしてプレートは動くのか? なぜ、日本海溝へ沈んでゆくのか?
どうもしっくりこない、納得しきれない、そんな気持ちが残っていました。
2010年6月。7年間の宇宙の旅を終えた小惑星探査機はやぶさが地球に戻ってきました。 へー。そんなの飛ばしてたんだー。 という程度でしたが、テレビでそのプロジェクトに携わった教授が言っていました。
地球はそもそも、イトカワのような小惑星がたくさんぶつかり合ってできた星であること。
ふむふむ。
だから、小惑星の成分を調べれば地球の成り立ちを解明できること。
そういうことか。
イトカワは細長い形をしているのに対し地球が球形なのは、イトカワは個体で地球は液体であるから。
え!液体!?
地球は液体を多く含む小惑星がたくさんぶつかって融合した。
「だから地球って丸いんですよ」と微笑む教授。
そういえば、スペースシャトルでジュースを飲みます、みたいな映像で、ジュースは丸い粒でふわふわと浮いていたなあ。
地球の内部では鉱物が煮えたぎっていて、それが少しずつ表面に出てきて、マグマができて、火山から噴火する。
それは、鉄を炉で溶かして型に流すとき、内部は熱くて赤々としているのに対し、空気に触れた部分は冷えてきて黒ずんで固まろうとしている。というのに似ているなあ。
ん? もし!もし! そんなことが地球の内部で起こっていたら?
地球は寒い(マイナス何度かもわからない)宇宙空間にぽっかりと浮かんだ液体で、内部は熱く、表面は冷たいから、冷たいものは下に落ちるという水の対流の原則で言うと、プレートは表面で冷めてしまった液体で、下(中心部)に落ちようとしている。そのプレートの上のさらに海から出ている一部分の陸地に私たちが住んでいる、ということになる。
人間にとってプレートは何万年もかけてゆっくりと動いているように見えるけれど、46億年という年月をこの宇宙空間で過ごしている地球にとって、それは決してゆっくりではなく、目に見えて速い動きなのかもしれない。
プレートの動きと、地震と、人間の関係が私の中でやっと繋がりました。
今回の大震災を、だから仕方がない、とは言いません。
私は人間なので、人間の時間軸で生きています。地球にとってはちょっと身をよじっただけかもしれませんが、人間にとって、地球に住む小さな多種多様の生物にとっては大きな動きだったことには間違いありません。
でも、私たちは何万年もの時間をかけて、進化し、脈々と命を繋げてやってきました。
大きな宇宙空間の中の小さな地球。広い広い海と、大きな大地の中にいる小さな小さな生き物たち。
どんなに地球が大きくて、こんなに宇宙が広くて。 なのに人間はこんなにちっぽけで。
そんなことを嫌というほど思い知らされました。
この度の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。
2011年4月 FLOWMOTIONカフェ担当 つかこしちひろ