「サンタクロース」 007
サンタクロースはいると思いますか?
もちろん誰もが幼い頃にはいると信じていたことでしょう。いつの頃からか信じなくなります。クラスの男の子が「サンタなんているわけないよ。あれはお父さんとお母さんなんだぜ!」と知ったかぶります。
それでも私は「そんなわけない!うちには来るもん!」と思い続けていました。
小学6年生のクリスマス、そのはかない夢は粉々に砕け散ります。隠しておいたプレゼントを夕食前に見つけてしまった弟が「イエーイ!プレゼントだー!」とはしゃいだことで、なんと母が「サンタクロースなんていないんだよっ。お父さんとお母さんが一生懸命働いたお金で買ったものなんだから、ちゃんとお礼を言いなさいっ 」
・・・ガーン・・・
分かっちゃあいましたよ。分かっちゃいたけど、夢を見たっていいじゃないか。だから私、高価なものは頼まなかったよね?
しかし、こんなことで、弟がはしゃいだ程度で私の夢を打ち砕かれると言うことは何とも納得がいかない。その年、ディズニーの「サンタクロース」という映画が上映されていました。クリスマス商戦で欠陥商品を売りさばいていた男が本物のサンタクロースに出会う話です。ああ、やっぱりどこかにいるんだサンタクロース・・・。北欧のスウェーデンとかフィンランドの山奥の森の中に住んでいるんだ。そう確信した小学6年生の12月31日大晦日でした。
それからの私は「夢のない大人なんてイヤだ」と思いながら年を重ねてゆきました。サンタクロース事件から10年ほど経ったある日、友人との会話の中で「将来、喫茶店やりたいなー。見晴らしの良い丘の上にログハウスを建てて、カーテンは赤と白のギンガムチェックでぇ、薪ストーブがあってぇ、裏の畑で苺なんか作ったりしてぇ、やってきた若い女の子同士のお客さんに『おまけです』って苺をケーキに添えたら『キャー、かわいー』とか言われるの。ムフフ・・・」とかなり妄想をしてしまいました。
その話はしばらく口にすることはありませんでしたが、私は妄想を実現するべく一眼レフカメラを買いました。喫茶店が儲かるものではないと分かっていたからか、自分で撮った写真を絵葉書にして店頭で売り、それが宣伝になると思っていました。
コーヒーの淹れ方とか、ケーキの作り方とか、ログハウスの建て方とか、もっと別の方法から入るべきだったはずなのに、それからの4年ほどは喫茶店の夢を忘れかけ、カメラに熱中していました。
・・・あれ? 私、喫茶店をやりたいんだった。
そのことに気がついたのは、当時の仕事に疲れてきて毎日にむなしさを感じていた時でした。
新得の雑木林の中に赤い屋根の大きな丸太小屋があります。私が思い描いていたギンガムチェックのカーテンが似合いそうなログハウスの喫茶店です。
その喫茶店との出会いが、私の人生を大きく変えたといっても過言ではありません。
そこの奥さんは 『やりたいと思ったことは言葉に出して言うと実現する』 と話してくれました。(それには信じられないエピソードがあるのですが、それはまた次の機会に・・・)
その奥さんの言葉を受けて、私は翌日から「将来、喫茶店をやりたいんだ」と周りの人に話すことにしました。みんなポカンとしていましたが、私の場合、口に出し始めて5年でその夢がかないました。(と言っても、紆余曲折ありましたが、また次の機会に・・・)サンタクロースは今でも確かにいると思います。子供に限らず、大人も夢を持つべきです。叶うだろうと思っていなくても、周りの人に話していけばいつかきっと実現します。今の自分がまったく違う方向にいたとしても、いつかきっと転機は訪れます。
そんな風に夢を持ち続けられる大人がたくさんいると、世の中は楽しいだろうなあと思います。 さあ、夢を話してみてください。笑われてもいいんです。将来、自分が笑うために夢はあるのですから。
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2008年12月
FLOWMOTIONカフェ担当 つかこしちひろ